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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

と、彼は又笑いながら自分の耳を指さした。

「それにしても、その死骸が鍋久の嫁だということがどうして判ったね」

「そりゃあ確かには判らねえ。そこは推量さ」

「向うへ行って、もし間違っていたら引っ込みが付くめえ」

「そりゃあ段取りがありまさあね」と、彼は半七の無経験をあざけるように答えた。「いきなり証拠物を出しゃあしねえ。まず番頭に逢って、こちらのお嫁さんの死骸は見付かったかと訊くと、まだ見付からねえという。家を飛び出した時にはどんな物を着ていたかと訊くと、四入り青梅の単衣でこうこういう縞柄だという。それがぴったり符合していりゃあ、もう占めたものだ。そこで初めて怪談がかりになって、証拠の片袖を御覧に入れるんだから十に一つも仕損じはありゃあしねえ。ねえ、そうじゃあありませんか」

後学のために覚えて置けと云わないばかりに、彼はそらうそぶいていた。こうなると普通の騙りや強請ではない。ともかくも其の片袖は本物である。十両の礼金は鍋久が勝手にくれたのである。それらの事情をうまく云いまわせば、彼は単に叱り置くぐらいのことで、ほんとうの科人にはならないかも知れない。彼が多寡をくくって平気な顔をしているのも、それが為であろうと半七は思った。