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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

ひとりで来る時もあり、二人づれで来る時もありましたが、まあ大抵はひとりで来ました。年頃は三十五六でしょうか、色の黒い、骨太の、なんだか眼付きのよくない男で、めったに口をきいたこともなく、いつも黙って頭をいじらせて、黙って銭をおいて行くんです」

「それがどう変なのだ」

「どうということもありませんが……。わたしも客商売で、毎日いろいろの人に逢っていますが、どうもその男の様子がなんだか変でしたよ」

「その男は今でも来るかえ」と、半七は煙草を吸いながらしずかにきいた。

「いや、それがまたおかしいんです。九月のなかば過ぎ、山卯の若い衆が清水山へ見とどけに出かけてから二、三日あとのことでした。その男がいつもの通りふらりとはいって来て、わたしに髭を当らせていると、そこへまたほかの客がはいって来て、山卯の若い衆の噂をはじめると、その男は黙って聞いていたが、やがてにやりと忌な笑い顔をして、半分はひとり言のように、そんな詰まらないことをするものじゃあない。しまいには身を損ねるようなことが出来する……と。わたしはそれに相槌を打って、まったくそうですねと云いましたが、その男はなんにも返事をしませんでした。