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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁
二人は先生先生と呼びつづけながら、木立のあいだは勿論、草原や畑道をむやみに駈けまわったが、どこからも左内の返事は聞かれなかった。当処も無しに駈けつづけて、二人は疲れ果てた。
「もう仕方が無い。道場へ帰って提灯を持って来て、手分けをして探そう」
よんどころなく引っ返して来る途中、あたかも吉祥寺門前で迎えの人々に出逢ったのである。その報告を聞いて、人々は俄かに騒ぎ立った。提灯ひとつでは不足だというので、家の近い者は引っ返して自分の家から提灯を持って来た。その一人は道場へも知らせに行ったので、残っている者もみんな駈け出した。喜平次と伊太郎を案内者にして、都合十七、八人が五つ六つの提灯を振り照らしながら、ふた組に分かれて捜索にむかった。
江戸の絵図を見ても判るが、ここらの百姓地はなかなか広い、しかも人家は少ない。その大部分は田畑と森と草原である。二組の捜索隊は先生を呼びながら、闇の夜道をたずねて歩いているうちに、伊太郎を先立ちのひと組が路ばたに倒れている師匠の死骸を発見した。そこには一本の大きい榛の木が立っていて、その下を細い田川が流れている。左内はその身に数カ所の傷を受けて、木の根を枕に倒れていたのである。