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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

「そうしましょう」

二人は怱々に飯を食ってここを出た。鰻縄手へゆく途中で、半七はまた云い出した。

「おい、亀。おれもだんだん考えたが、あのズウフラというものは筒にどんな仕掛けがあるか知らねえが、遠くの人を呼ぶ以上、相当に大きな声を出さなけりゃあならねえ筈だ。いくら人通りの少ねえ畑や田圃路だといって、道のまん中に突っ立って呶鳴っていちゃあ、すぐに種が知れてしまうから、少し距れた所から低い声で呼ぶに相違ねえ。つまり其の人のすぐうしろにいねえと云うだけのことで、そんなに遠いところから呼ぶのじゃああるめえと思う。こっちが気を鎮めて窺っていれば、大抵の見当は付く筈だのに、みんなびくびくして慌てるからいけねえのだ」

「まったくお前さんの云う通り、そんなに遠いところから呼ぶのじゃああるめえ。今夜ひとつ張り込んで見ましょうか」

「むむ。道場の模様次第で、張り込んでみてもいいな」

そんなことを云いながら、二人は岩下の道場の近所まで引っ返して来た。縁の無い者がむやみに表門からはいるわけにも行かないので、杉の生垣のあいだから覗いてみると、座敷には障子が閉めてあるので好くは判らないが、その障子に映る影を見ても、相当に大勢の人々が集まっているらしく、僧侶の読経の声や鉦の音も洩れてきこえた。