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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁
彼らは口々に罵り騒いでいた。内から仏前の蝋燭を持ち出して、庭さきを照らしているのもあった。しかも怪しい物の姿はみえず、怪しい声もそれぎりで止んでしまったので、彼らも根負けがして再び内へ戻ると、それを窺っていたように怪しい声はまた呼んだ。
「御新造さん……。御新造さん……」
さっきから耳を澄ましていた半七は、小声で亀吉に教えた。
「判った。あの屋根へ石を叩きつけろ」
東どなりには少しばかり空地があって、その隣りは法衣屋であった。往来の人を相手にする商売でないので、宵から早く大戸をおろして、店のくぐり障子に灯の影がぼんやりと映っていた。怪しい声はその屋根から送られて来るものと、半七は鑑定したのである。
二人は探りながらに足もとの小石を拾って、隣りの屋根を目がけて投げ付けた。いわゆる闇夜の礫で、もちろん確かな的は見えないのであるが、当てずっぽうに投げ付ける小石がぱらぱらと飛んで、怪しい声の主をおびやかしたらしく、屋根の上を逃げて行くらしい足音がきこえた。ここらは板葺屋根が多いのであるが、隣りは平家ながら瓦葺であるために、夕方のひと時雨に瓦がぬれていたらしく、それに足をすべらせて何者かころげ落ちた。