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はんしちとりものちょう

時代推理小説 半七捕物帳(四)

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁

青空文庫

「だから、あやまっているじゃあないか。巳之さん、まあ訳を訊いておくれというのに……」

「知らねえ、知らねえ。そんな狐にいつまで化かされているものか」

自分の口から狐と云い出して、巳之助はふと気がついた。この女はほんとうの狐であるかも知れない。悪い狐がお糸に化けておれをだますのかも知れない。これは油断がならない、と彼は俄かに警戒するようになった。

「ねえ、巳之さん。わたしはどんなにでも謝るから、まあひと通りの話を聴いて下さいよ。ねえ、もし、巳之さん……」

口説きながら摺り寄って来た女の顔、それが気のせいか、眼も鼻も無い真っ白なのっぺらぼうの顔にみえたので、巳之助はぎょっとした。彼は夢中で提灯を投げ出して、両手で女の咽喉を絞めようとした。

「おまえさん、何をするの。あれ、人殺し……」

突き退けようとする女を押さえ付けて、巳之助は力まかせにその咽喉を絞めると、女はそのままぐったりと倒れた。

「こいつ、見そこなやあがって、ざまあ見ろ。憚りながら江戸っ子だ。狐や狸に馬鹿にされるような兄さんじゃあねえ」

投げ出すはずみに蝋燭は消えたので、提灯は無事であった。潮あかりに拾いあげたが、再び火をつける術もないので、巳之助はそのまま手に持って歩き出そうとする時、彼はどうしたのか忽ちすくんで声をも立てずに倒れてしまった。