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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(四)
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《時代推理小説 半七捕物帳(四)(はんしちとりものちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 217,272 字 · 434 頁
宵を過ぎると、柳原の通りにも往来の人影はだんだん薄くなった。例の夜鷹の群れも妖怪のうわさに恐れて、この頃は和泉橋よりも東の堤寄りに巣を換えてしまったので、二人はからかっている相手もなかった。喜平ほどの熱心家でもない銀蔵はすこし退屈して来たところへ、五ツ(午後八時)を過ぎる頃から細かい雨がほろほろと落ちて来た。
「あ、降って来た。こりゃあいけねえ」と、銀蔵は空をあおいだ。
この企ては今夜に限ったことでもない。近所のことであるから、あしたの晩また出直そうではないかと、かれは丁度幸いのように云い出した。
「なに、たいしたこともあるまい。折角出かけて来たもんだから、もう少し我慢してみようじゃあないか。強く降って来たら、駈け出して帰る分のことだ」
喜平は強情に主張するので、銀蔵は渋々ながら附き合っていると、雨はさのみ強く降らないで、やがて大銀杏のこずえに月がぼんやりと顔を出した。
「それ見ねえ。すぐ止んだ」
「だが、いやに薄ら寒くなって来たな」と、銀蔵は肩をすくめた。「夜が更けると往来なかはやりきれねえ。そこらの軒下に行こうじゃねえか」
ふたりは大通りを横切って、戸をおろしてある床店の暗い軒下にはいろうとすると、店と店とのあいだから一つの黒い影があらわれた。