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ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう
本州横断 癇癪徒歩旅行
押川 春浪
線上閱讀押川 春浪《本州横断 癇癪徒歩旅行(ほんしゅうおうだん かんしゃくとほりょこう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 22,749 字 · 45 頁
(二〇)とんだ宿屋
昨日の第一着は差引きでゼロと相成った。残念残念。
雲巌寺は開基五百余年の古寺で、境内に後嵯峨天皇の皇子仏国国師の墳墓がある。山門の前を流るる渓流は、その水清きこと水晶のごとく、奇巌怪石の間を縫うて水流の末はここから三里半ばかり、黒羽の町はずれを通っていると聴くので、足の重くて堪らぬ吾輩は一策を案じ出し、
「どうだ、大きな盥を八個買ってそれに乗り、呑気に四方の景色を見ながら水流に泛んで下ったら、自然に黒羽町に着くだろう」と、そこで新しい盥でも古い盥でも構わん、人間一疋乗れそうな盥を売ってくれぬかと、そこらをウロウロ捜し回ったが、こんな寒村に大盥が八個もあろう筈はないので、せっかくの妙案もあわれオジャンと相成った。
しかし雲巌寺を出発してから行く途々、渓流に沿うて断岸の上から眼下を見れば、この渓流には瀑布もあれば、泡立ち流るる早瀬もあり、また物凄く渦巻く深淵などもあって、好奇に盥に乗って下ろうものなら、二人や三人土左衛門と改名したかも知れぬのだ。盥が無くて仕合仕合。
(二〇)とんだ宿屋
雲巌寺から黒羽町までは炎天干しで、その暑い事は焦熱地獄よろしくだ。半身裸体の吾輩などは茹章魚のごとくになり申した。