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とうかいどうごじゅうさんつぎ
東海道五十三次
岡本 かの子
線上閱讀岡本 かの子《東海道五十三次(とうかいどうごじゅうさんつぎ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,849 字 · 28 頁
風俗史専攻の主人が、殊に昔の旅行の風俗や習慣に興味を向けて、東海道に探査の足を踏み出したのはまだ大正も初めの一高の生徒時代だったという。私はその時分のことは知らないが大学時代の主人が屡々そこへ行くことは確に見ていたし、一度などは私も一緒に連れて行って貰った。念の為め主人と私の関係を話して置くと、私の父は幼時に維新の匆騒を越えて来たアマチュアの有職故実家であったが、斯道に熱心で、研究の手傅けのため一人娘の私に絵画を習わせた。私は十六七の頃にはもう濃く礬水をひいた薄美濃紙を宛てがって絵巻物の断片を謄き写しすることも出来たし、残存の兜の錣を、比較を間違えず写生することも出来た。だが、自分の独創で何か一枚画を描いてみようとなるとそれは出来なかった。
主人は父の邸へ出入りする唯一の青年といってよかった。他に父が交際している人も無いことはなかったが、みな中年以上か老人であった。その頃は「成功」なぞという言葉が特に取出されて流行し、娘たちはハイカラ髷という洋髪を結っている時代で虫食いの図書遺品を漁るというのはよくよく向きの変った青年に違いなかった。けれども父は