輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《柳橋物語(やなぎばしものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,300 字 · 202 頁

青空文庫

男は片手をふところから出した、「――まさか忘れる筈はねえだろう、ほら、おめえんちのすぐ向いにいた権二郎だよ」

「おばさん、来て」おせんは蒼くなって叫んだ、「――おばさん来て下さい」

悲鳴のような叫びだった。お常は洗濯をしていたらしい、濡れ手のままとびだして来ると、慌てておせんを背に庇った。

「どうしたんです、この子がなにかしたんですか」

「冗談じゃねえ、なんでもねえんだよ」男は苦笑しながら手を振った、「――おらあこの娘を知ってるんで、いま通りがかりに見かけたからちょっと声をかけたんだよ」

「このひとを知ってるんですって」

「向う前に住んでたんだ、いま取払いになっちまったが三丁目の中通りで、この娘のうちは研屋、おらあ山崎屋という飛脚屋の若い者で権二郎っていうんだ」

「まあそうですか」お常はほっとしたように前掛で手を拭いた、「――このひとは火事の晩にどうかしたとみえて、以前のことはなんにも覚えちゃいないんですよ、ついした縁であたしたちがひきとってお世話してるんですけれど、じゃあ親類かなんかあるんでしょうか」

「そいつはおいらも知らねえが、茅町二丁目に杉田屋てえ頭梁があった。