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しょくぶつき

植物記

牧野 富太郎

線上閱讀牧野 富太郎《植物記(しょくぶつき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 165,848 字 · 327 頁

青空文庫

しかしその黒髪山は何処の黒髪山か余りはっきりせぬ様だ。しかし今日の万葉学者はその山は奈良の北方に在る佐保山の一部だといっているが、それはかなり高い山でがなあろう。もしそうであるとするとこんな山の中には麦門冬は生えていないだろうから、ここはやはり普通に山中何処にもある Carex 属のスゲと見た方がずっと実際に即している。何時も麦門冬の古名ヤマスゲの称呼に拘泥して、ヤマスゲとあればこの麦門冬のヤマスゲ以外にはヤマスゲの言葉は一切無いと考えるのは、融通性のない固陋な見解であると私は信ずる。前述の通り麦門冬の生育地は低い岡や山足の地、あるいは平地の樹下の場処に限られていて少し高い山地から奥山、深山には生じていないが、Carex 属のスゲ類なれば沢山いろいろの種類があって岡にでも浅い山にでも、また高い山でも、また奥深き深山でも極めて広範囲に亙って何処でも到る処に生い茂っていて趣のあるものであるから、昔の歌よみが常識的にもこれを見逃すはずはなく、キットこれをも歌に採り入れているに相違ないと私は思う。また俗間で歌よむ人々は何も一々植物学者ではないから、時にある禾本類が沢山に山中で繁茂している処を遠望して、これを山スゲなどと既に在る成語を使った例は恐らく幾つもありはせぬかと想像する。