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ウニデスちょうりゅうのかなた

橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇

橘 外男

線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 幻想・伝奇小説篇(ウニデスちょうりゅうのかなた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,361 字 · 483 頁

青空文庫

その間に気分がまったく回復したから、夫人はまた人々の談笑の中へ戻って来たのであったが、舞踏室に沿って、長い廊下を右へ折れると、そこが控え室になる。その一角にオーケストラが屯して、各種とりどりの鉢植えの植物が葉を繁らせている。その奥手に椅子にもつかずに、ギェラップ船舶相や、バング蔵相、来朝中のベテレヘム製鋼会社長のシューレンバック氏、賜暇帰朝中のヴェルトネル駐仏大使らの一団が、葉巻をくゆらして酒杯片手に、賑やかに笑い興じていた。南阿の狩猟談に話の花が咲いているらしく、夫も傍らに肥った身体に酒杯を持って笑っているし……しかも夫人が眼を瞠ったのは、なんとその哄笑の中心に、殿下もほほ笑みながら酒杯を挙げていられることであった。

夫人が近付いて来たのも気付かれぬように、……いいや、気は付いていられたのかも知れぬ。優しい笑みを含んで、こちらの方は眺めていられるが、なんと! それは今の今まで、木陰のベンチで自分をいたわって、冷たい飲物まで運んで来て下さった、あの御親切な殿下の親しさのそれではない。いわんや、夫に知らせて下さるも何もあったものではない! さながらさっきからこの座の中心として、夫人なぞとは何の関係もなかったように、素知らぬお顔である。