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たなださいばんちょうのかいし
橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇
橘 外男
線上閱讀橘 外男《橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇(たなださいばんちょうのかいし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 112,181 字 · 219 頁
まったくの貧乏な身の上というのではありません。
が、しかし、仮にもユーゴの、銅山王とまでいわれた人の孫娘たちが、山の奥に住んで立ち腐れの工事場を抱えて、戦争の痛手を受けて何もかも、滅茶滅茶になっていると知っては、まったく何といって慰めていいかが、わからないのです。殊に、私の心を打ったのは昔の恩人である祖父の安否を気遣って、当てにもならぬ消息を待って、この山奥に暮している父親の尊い心と、その心の中を察して、世の中の華やかさ賑やかさを振り向きもせず、この人気のないところに住んでいる娘たちの優しい心持だったのです。それが、何ともいおうようない気持を私に起させて、私は涙ぐましい感激に打たれました。
彼女は膝の上に両肘を凭せて、頤を支えながらじいっと、湖へ瞳を投じています。彼女に膝を並べて、私も言葉もなく、湖を眺めていました。何の不自由もない富豪の家に生まれながら、なじまない父の国に憧れて来たばっかりに、数奇な運命に弄ばれている娘……そして今では、ここよりほかに国も家も持たぬ娘……妹と父親のほかには、一家一門おそらくは死に絶えてしまったのであろう孤独な身の上……と、思うと、彼女は別段暗い面持もしてはいませんが、それだけに私の心の中には、暗い侘しさが水のように忍び寄ってくるのです。