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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 178,724 字 · 355 頁

青空文庫

」

どっと笑声がおこった。俊三はただやたらに頭をかいていたか、ひどくてれているようなふうでもなかった。そして笑声がいくらかしずまるのをまって、すこし肩をいからせながら言った。

「僕は、きょう、大沢さんと鶏の解剖をしながらいろんなことで議論しましたが、たいてい負けました。そして大沢さんのような人が白鳥会に感心しているなら、僕も感心してもいいという気になりました。それで入会することにしたのです。鶏をたべたかったからではありません。どうぞよろしく。」

また、笑声がどっと起った。その笑声の中で俊三は一たん坐りかけたが、また立ちあがって俊亮の方を見た。そしてずるそうに微笑しながら、

「小父さんも、どうぞよろしく。」

みんなはころげるようにして腹をかかえた。朝倉先生夫婦も俊亮の顔を横からのぞきながら、声を立てて笑っている。俊亮もつい吹き出したが、

「おまえや次郎には、やはり父さんと呼んでもらいたいな。それが人間の真実というものだよ。」

笑声は、それでまた一しきり高くなった。しかし、それはそう永くはつづかなかった。真実という言葉は、それがどんな場合につかわれようと、もうみんなの心には、何か犯しがたい力をもって響くようになっていたのである。