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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 頁
すると、それからなお一週間ほどたったある日のこと、変にしゃがれた声で、
「今日は。」
とあいさつして、やけに喉のあたりを扇であおぎながら、店に這入って来た女があった。でっぷり肥った五十前後の白あばたのある女で、小さなまげを結っていた。
ちょうど午過ぎの、暑いさかりで、ひっそりした店では、仙吉が帳場の机のそばで居眠りをして居り、文六の姿は見えず、次郎が、空樽に腰かけて雑誌を読んでいるところだった。次郎は、顔をあげてその女を見ると、すぐ、どこかで見たことのあるような女だと思った。
「まあ暑いこと。」
女はそう言って、無遠慮に店先に腰をおろした。そしてじろじろとあたりを見まわしていたが、仙吉がねぼけた眼を自分の方に向けたのを見ると、
「ほほほ、のんきそうだこと。結構なお身分だわ。」
仙吉の顔はやにわに緊張した。そして、
「いらっしゃいまし。」
と、いかにも冷淡に言って、膝を立て直した。すると、女は、扇をたたんでそれを帯にはさみ、その代りに何か書付けみたようなものをひっぱり出しながら、
「今日は、こないだの次のぶんを頂戴にあがったんですがね。もうあれから半月以上にもなるし、こちらのご都合もちょうどいい頃かと思って。