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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 頁

青空文庫

」

次郎は、昨日天満宮のまえで味った気持をもう一度思いおこした。そして、それが先生の言っているのと同じ気持ではないだろうか、という気がして、異様な興奮を覚えたが、やはり、口に出しては何とも言いかねた。すると、先生は、急に笑い出し、

「いや、話がつい自分のことになってしまって、ますかったね。熱っくるしい話は、今日はもうこれで打切りだ。」

と、コップを置いて立ち上りかけた。

「貴方、お菓子はいかが。」

「そうか、お菓子があったんだね。どうだい、本田さっさと平らげて畑をやろうじゃないか。」

次郎は、それでやっと麦湯をのみ、菓子をつまんだ。

その日、奥さんは、畑をしまって帰ろうとする次郎に、夕飯を振舞おうとしたが、次郎は、なぜか逃げるようにして帰った。そして、家に帰りつくまでに、彼は、自分にとってはやはり何もかもが「無計画の計画」だったと思った。しかし、この言葉は、最近彼が何かで覚えた「摂理」という言葉と結びついて、一層彼の胸に深まりつつあったようであった。

「運命」――「無計画の計画」――「摂理」――この三つの言葉が、彼の心の中で、殆んど同義語と思われるまでに近づいて来たということは、同時に彼の対人生の態度が、我執と反抗から一歩一歩と謙抑と調和への道を辿りつつあった証拠だといえないだろうか。