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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 頁
しかし、いよいよ家財道具の始末をやり出すと、六年まえに村の家が没落した時の光景がまざまざと思い出されて、妙に悲しくなって来た。あの時の売立には、今から考えると、美しい鍔のついた刀やら、蒔絵の箱やら、掛軸やら、宝物らしいものが沢山あったようだ。それにくらべると、今は何という貧弱さだろう。
そういえば、僕が正木の家に預けられたのは、あの売立のあった晩だった。正本の祖父が、だしぬけに僕を預ると言った時のことは、今に忘れられない。その時には、なぜ祖父が僕を預ると言い出したのかわからなかったが、今になってみると、よくわかる。――僕には、僕の気づかない危機が何度あったか知れないが、そのたびに僕を救ってくれた人があったのだ。
危機に誘いこまれるのも運命、危機から救われるのも運命。そして、人間の運命の大部分を支配するものは愛憎の波だ。僕は、すべての人間の運命のために、このことを忘れてはならない。しかし、その愛憎そのものもまた運命だとすると、僕はどう考えていいかわからなくなる。
僕は、がらくたばかりのような家具を祖母に指図されて棚からおろしながら、そんなことを考えた。