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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 頁

青空文庫

その点では気が楽だった。しかし、祖母と二人、照りつける日の中を、荷馬車のあとから、汗と埃になって歩く姿は、あまりにもみじめな没落行ではなかったろうか。

照りかわく

ほこり路に

七十路の

人の影

いともちいさし

ちさきまま

消えやらぬ

そのかげよ

愛憎は

げにも果てなし

僕は、歩きながら、こんな詩を作った。自分ながらいやな詩である。

こんどの家は、なるほど古い百姓家だ。しかし、すぐそばに北山から流れて来る水のきれいな小川がある。小川の土手には松の並木もある。近くに土橋がかかっており、その袂には栴檀の古い木があるので、その橋を栴檀橋というのだそうだ。僕にはその名称も気に入った。それに家が古いといっても、建てかたは頑丈で、土間は馬鹿に広いし、おまけに総二階だ。二階に天井がなく、煤けた藁屋根の裏がまる見えなのが欠点だが、その代り、松並木や青田が広々と見渡せる。町の店屋なんかよりいくら気持がいいか知れない。

大巻の祖母と徹太郎叔父が手伝ってくれたので、道具は日のくれないうちにあらまし片づいた。夕食も大巻から運んでくれた。大巻の家までは、ほんの二三分である。

八月二十九日

大巻の祖父が村の大工をつれて来て、父と養鶏場設計の相談をはじめた。