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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 117,781 字 · 235 頁

青空文庫

であった。

こうして、彼は、父の鶏舎や畑を手伝いながら、身も心も張りきって、中学三年から四年にかけての約一年半を過ごしたが、その一年半こそは、彼のこれまでの生活の中で最も永続きのした明るい生活であった。そして、一生のこの時期に、そうした生活を恵まれたということは、ただちに彼の身長にまで影響を及ぼした。彼が幼年時代に自分のちびであるのをひどく恥じていたことは、多分まだ読者の記憶にも残っていることだと思うが、この羞恥感は、その後の彼の内面生活の変化と共に、いくらかずつうすらいで行ったとはいえ、中学三年の二学期頃までは、完全にぬぐい去られていたとはいえなかった。というのは、体操の時間にいつも一番びりに並ばされたり、友達に「君は弟より背が低いのではないか」と言われたりすることは、この年頃の青年としては、全く無関心ではあり得ないからである。ところが、その二学期も終りに近づくころから、――言いかえると、父が養鶏事業をはじめて三月ほどもたったころから、――彼の身長は急にのび出し、間もなく俊三をぬいたばかりか、三年から四年に進級したころには、組の生徒を十人ほどもぬいてしまい、四年の夏休みがすんだあとの身体検査では、ちょうど組の真中ぐらいのところまで進んでしまったのである。