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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 200,443 字 · 398 頁

青空文庫

次郎は、出迎えながら、それとなくその顔色をうかがったが、友愛塾の精神を象徴するかのような、その平和であたたかな眼には、微塵のくもりもなく、そのゆったりとしたものごしには、寸分のみだれも見られなかった。次郎は、ほっとした気持ちになりながらも、一方では、何かにおしつけられるような、変な胸苦しさを覚えた。

最後に二台の自動車が、同時に乗りつけた。その一つは、荒田老のであり、もう一つは、星章を光らした大型の陸軍用であった。荒田老は、例によって鈴田に手をひかれながら、黒眼鏡の怪奇な顔をあらわした。陸軍用の車からは、中佐の肩章をつけた、背の高い、やせ型の、青白い顔の将校が出て来たが、しばらく突っ立って、すこしそり身になりながら、玄関前の景色を一わたり見まわした。

その間に、鈴田が次郎に近づいて来て、

「田沼さんはもうお出でになっているだろうね。」

「はあ、見えています。」

「じゃあ、陸軍省から平木中佐がお見えになったと、通じてくれたまえ。荒田さんから今朝ほど電話でお知らせしてあるんだから、おわかりのはずだ。」

次郎は、横柄な口のきき方をする鈴田に対して、いつになく憤りを感じ、返事をしないまま塾長室に行った。