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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 頁

青空文庫

そして最後に、やっとのこと、北極星を見出すことが出来たが、その光が案外弱いものだったので、彼は何だかつまらなく感じた。

「海では、あの星が方角の目じるしになるのじゃ。あれだけは、いつも動かないからの。」

老人はそう言って歩き出した。次郎はこれまで星が動くとか、動かないとかいうことについて、全く考えたこともなかったので、老人の言うことを、ちょっと珍しく思った。

「外の星はみんな動いています?」

「ああ、大てい動いている。あの七つの星も、北極星のまわりを、いつもぐるぐる廻っているのじゃ。一時間もたつと、それがよくわかる。」

いつまでも動かない星、――それが、ふと、ある力をもって、次郎の心を支配しはじめた。彼は歩きながら、ちょいちょい空を仰いで、北極星を見失うまいとつとめた。そして、これまでに経験したことのない、ある深い感じにうたれた。「永遠」というものが、ほのかに彼の心に芽を出しかけたのである。

彼は、本田のお祖父さんの臨終のおりに、ちょっとそれに似た感じを抱いたことを、記憶している。しかし、それはほんの瞬間で、しかもその時の感じは、お祖母さんのいきさつのために、ひどく濁らされていた。