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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
線上閱讀下村 湖人《次郎物語(じろうものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 頁
窓の外では、廂の上に伸びでた橙の木に、蜜蜂が何疋もたかって、白い花をほろほろとこぼしていた。次郎は、見るともなしにそれを見つめていた。すると、梯子段の下から、だしぬけにお延の声がきこえた。
「次郎ちゃん、お勉強?」
次郎は、なぜか、すぐには返事が出来なかった、彼は、急いで筆入の中から鉛筆を一本取り出し、しきりにそれを削りはじめた。
「おや、いないの?」
お延の足音が梯子段を上って来た。次郎が、鉛筆と小刀を持ったまま、あわてて立ち上ると、もうお延の顔が覗いていた。
「まあ、返事をしないものだから、どうしたのかと思ったわ。……父さんが呼んでいらっしゃるから、すぐおりてお出で。」
次郎は、異様な緊張を感じながら、お延のあとについて階下におりた。
座敷には、もう謙蔵の姿は見えなかった。俊亮と老夫婦とは、相変らず硬い顔をして坐っていた。次郎は、俊亮にお辞儀をして、窮屈そうにその前に坐ったが、その眼は、みんなの顔を見くらべては、すぐ畳の上に落ちていくのであった。
「次郎、お前には、これから、母さんにしっかり孝行をして貰わねばならんが……」
俊亮はかなり永い間次郎を見つめてから、いつもに似ぬおもおもしい口調で言った。