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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《武州公秘話(ぶしゅうこうひわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,572 字 · 209 頁
ゝ、決然として一向宗徒に加担する態度を明かにした。「自分は今日まで一閑斎の恩義に感じて檜垣衆の乞いを斥けて来たけれども、しかし昨今の筑摩家の無為無能には愛憎が盡きた。僅か数千の敵を討つのに三四倍の兵力を費しながら、既に半歳に垂んとして未だに目的を達しないのは何と云う態だ。牡鹿山の君臣共は何の面目があって地下の一閑斎に見えるつもりか。自分の見る所を以てすれば、彼等は久しからずして国を失い家を滅ぼすに極まっている。自分は到底此の状態を黙視するに堪えないから、檜垣衆に加勢して悪政と内乱に苦しむ百姓共を救ってやろうと決心した。先代の恩義はさることながら、彼等のような暗愚凡庸な君臣共に取って代るのに何の憚ることやあらん」―――公は折柄則重の書状を携えて来た筑摩家の使者を引見して、傲然とこう云い放った。そして、「汝帰って此の趣を則重に告げ知らすべし」と、々に彼を追い返した。
此の時武州公は二十三歳であった。公は今迄にも数回実戦の経験を積んでいたけれども、一国一城の大名として、領内の精兵をすぐった軍勢の総大将として、自ら馬を陣頭に進めるのは此れが始めてなのである。