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ぶしゅうこうひわ

武州公秘話

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《武州公秘話(ぶしゅうこうひわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,572 字 · 209 頁

青空文庫

而も今度の出陣たるや、二三年来密かに秘策を廻らしたのが図に中って、豫期の如き風雲を孕み、戦機が熟した結果であって、功名栄達、手に唾して取るべく、権力と恋愛とが眼前に待っているのであるから、公の得意や想うべしである。公は六月中旬に八千餘騎を従えて多聞山を進発し、直ちに浅沼郡に入って檜垣勢と一所になったが、それでなくても攻めあぐんでいた筑摩方は、殆ど戦わずして陣を撤したので、忽ち栗生椎原の二郡を恢復した。公と檜垣勢の聯合軍は敵を追って前進を続けたが、沿道の城主共は風を望んで麾下に属する者が多く、月形城も亦それに呼応して明瞭に叛旗を飜し、盛んに近隣を攻略し出した。が、それらの合戦の状況は「筑摩軍記」に譲ることにして、茲には説くまい。斯くて聯合軍は東から、横輪豊前の兵は南から、互に連絡を保ちつゝ筑摩領を縮めて行って、やがて一手に集まった両方の軍勢が牡鹿城を包囲した。時に永禄二年八月、―――嘗て薬師寺弾正政高が此の城を囲んだ天文十八年から、ちょうど十年の後であった。

薬師寺の時の寄せ手は二萬と云う数であったが、今度も武州公の麾下と、檜垣衆と、横輪勢と、三つの兵力が合していたから、略同じ数に達していた。