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しご

死後

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《死後(しご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,956 字 · 6 頁

青空文庫

するとSもその瞬間に僕の気もちを感じたと見え、厭な顔をして黙ってしまった。

しばらく口を利かずに歩いた後、Sは扇に日を除けたまま、大きい缶づめ屋の前に立ち止った。

「じゃ僕は失敬する。」

缶づめ屋の店には薄暗い中に白菊が幾鉢も置いてあった。僕はその店をちらりと見た時、なぜか「ああ、Sの家は青木堂の支店だった」と思った。

「君は今お父さんと一しょにいるの?」

「ああ、この間から。」

「じゃまた。」

僕はSに別れてから、すぐにその次の横町を曲った。横町の角の飾り窓にはオルガンが一台据えてあった。オルガンは内部の見えるように側面の板だけはずしてあり、そのまた内部には青竹の筒が何本も竪に並んでいた。僕はこれを見た時にも、「なるほど、竹筒でも好いはずだ」と思った。それから――いつか僕の家の門の前に佇んでいた。

古いくぐり門や黒塀は少しもふだんに変らなかった。いや、門の上の葉桜の枝さえきのう見た時の通りだった。が、新らしい標札には「櫛部寓」と書いてあった。僕はこの標札を眺めた時、ほんとうに僕の死んだことを感じた。けれども門をはいることは勿論、玄関から奥へはいることも全然不徳義とは感じなかった。