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ししゃのしょ

死者の書

折口 信夫

線上閱讀折口 信夫《死者の書(ししゃのしょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 62,340 字 · 126 頁

青空文庫

この家も世間どおりに、女部屋は、日あたりに疎い北の屋にあった。その西側に、小な蔀戸があって、其をつきあげると、方三尺位なになるように出来ている。そうして、其内側には、夏冬なしに簾が垂れてあって、戸のあげてある時は、外からの隙見を禦いだ。

それから外廻りは、家の広い外郭になって居て、大炊屋もあれば、湯殿火焼き屋なども、下人の住いに近く、立っている。苑と言われる菜畠や、ちょっとした果樹園らしいものが、女部屋の窓から見える、唯一の景色であった。

武智麻呂存生の頃から、此屋敷のことを、世間では、南家と呼び慣わして来ている。此頃になって、仲麻呂の威勢が高まって来たので、何となく其古い通称は、人の口から薄れて、其に替る称えが、行われ出した様だった。三条七坊をすっかり占めた大屋敷を、一垣内――一字と見倣して、横佩墻内と言う者が、著しく殖えて来たのである。

その太宰府からの音ずれが、久しく絶えたと思っていたら、都とは目と鼻の難波に、いつか還り住んで、遥かに筑紫の政を聴いていた帥の殿であった。其父君から遣された家の子が、一車に積み余るほどな家づとを、家に残った家族たち殊に、姫君にと言ってはこんで来た。