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すいちゅうのきゅうでん
水中の宮殿
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《水中の宮殿(すいちゅうのきゅうでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 頁
紫外線よけの黒いロイド眼鏡をかけ、ダブダブの洋服を着て、ヘルメット帽を被った男は、こんな調子で始めました。
「どんなお話です、僕は貴方を知らないんですが――」
健一はすっかり用心深くなっておりました。
「知らなくていいです、私は東京の学校に勤めている者で、夏休を利用して、東北の河や湖水を釣って歩く者ですが、――実は、二、三日前の晩、この堤防をせっせと壊している者の姿を見かけたんです、――君はこの工事を監督しておられるようだから、一寸注意しておくだけのことですよ」
「どんな人です、その堤防を壊していたというのは?」
健一も固唾を呑みました。
「色の青白い、ハイカラな若い男ですよ、面長で、少し受口で、頭の毛をトンボの眼玉のように光らせた――」
「あッ、あの男ですか」
「知ってる人ですか」
「いえ、見たことのある人間です」
「いずれにしても、油断はなりませんよ、貴方とあの妹さん達の身辺には、絶えず何かつきまとっているようですから、――いや余計なことを言ってすみません、私は黙って鱒でも釣っていさえすればいいのですがね、――この辺には真夏の暑い日の夕方になると鱒が浮いて来ます。