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えいじつしょうひん

永日小品

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《永日小品(えいじつしょうひん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 50,000 字 · 100 頁

青空文庫

身躯の重みをちょっと寄せかけるや否や、音もなく、自然と身は大きなガレリーの中に滑り込んだ。眼の下は眩いほど明かである。後をふり返ると、戸はいつの間にか締って、いる所は春のように暖かい。自分はしばらくの間、瞳を慣らすために、眼をぱちぱちさせた。そうして、左右を見た。左右には人がたくさんいる。けれども、みんな静かに落ちついている。そうして顔の筋肉が残らず緩んで見える。たくさんの人がこう肩を並べているのに、いくらたくさんいても、いっこう苦にならない。ことごとく互いと互いを和げている。自分は上を見た。上は大穹窿の天井で極彩色の濃く眼に応える中に、鮮かな金箔が、胸を躍らすほどに、燦として輝いた。自分は前を見た。前は手欄で尽きている。手欄の外には何にもない。大きな穴である。自分は手欄の傍まで近寄って、短い首を伸して穴の中を覗いた。すると遥の下は、絵にかいたような小さな人で埋っていた。その数の多い割に鮮に見えた事。人の海とはこの事である。白、黒、黄、青、紫、赤、あらゆる明かな色が、大海原に起る波紋のごとく、簇然として、遠くの底に、五色の鱗を并べたほど、小さくかつ奇麗に、蠢いていた。