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えいじつしょうひん

永日小品

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《永日小品(えいじつしょうひん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 50,000 字 · 100 頁

青空文庫

紀元節

おれが持っているよりも安心かも知れないと老人は倅に云った。倅はそうかも知れませんと答えた。小供は三日間鉄砲玉ばかり食っていた。

紀元節

南向きの部屋であった。明かるい方を背中にした三十人ばかりの小供が黒い頭を揃えて、塗板を眺めていると、廊下から先生が這入って来た。先生は背の低い、眼の大きい、瘠せた男で、顎から頬へ掛けて、髯が爺汚く生えかかっていた。そうしてそのざらざらした顎の触る着物の襟が薄黒く垢附いて見えた。この着物と、この髯の不精に延びるのと、それから、かつて小言を云った事がないのとで、先生はみなから馬鹿にされていた。

先生はやがて、白墨を取って、黒板に記元節と大きく書いた。小供はみんな黒い頭を机の上に押しつけるようにして、作文を書き出した。先生は低い背を伸ばして、一同を見廻していたが、やがて廊下伝いに部屋を出て行った。

すると、後から三番目の机の中ほどにいた小供が、席を立って先生の洋卓の傍へ来て、先生の使った白墨を取って、塗板に書いてある記元節の記の字へ棒を引いて、その傍へ新しく紀と肉太に書いた。ほかの小供は笑いもせずに驚いて見ていた。さきの小供が席へ帰ってしばらく立つと、先生も部屋へ帰って来た。