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えどのかじゅつ
江戸の火術
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《江戸の火術(えどのかじゅつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,929 字 · 36 頁
「どうしてそれを」
「御難渋の様子を拝見して、曲者の手から奪い還しました」
「――――」
半十郎は何んとなくギョッとしました。この女の爽やかな声には、忘れ難い響があったのです。
「でも、手裏剣はお止しなさいまし、無益な殺生でございます」
若い女はそう言って、半十郎の前に振り分け荷を捧げるように、ニッコと含み笑いを見せました。小麦色の頬に淀んだ、深い靨、切れの長い眼も、紅い唇も、妙に蠱惑的ですが、前歯が二枚欠け落ちて、右の額から頬へかけて、燃え立つような赤痣、焼き損ねた名窯の陶器を見るような、痛々しさと凄まじさに、半十郎も思わずゾッとしました。
この女の美しさと醜さの、法外な不調和が、相対する限りの人に、造化の悪戯にする、反感のようなものを、かき立てずには措きません。
「――――」
逃げて行く第二の曲者の姿を見乍ら、半十郎はさすがに渋りましたが、
「さア参りましょう」
委細構わず、女は歩き出します。命より大事な、振り分けの荷物を手に入れると、今更第一の昼鳶にやられた、紙入のことが気にかかります。中はたった十三両二分でも、あれが無くては、江戸への旅を続ける見込がありません。