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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《江戸情話集(かごつるべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,779 字 · 407 頁

青空文庫

死罪になった者の死体は投げ込み同様で、もとより墓標なども見えなかったが、それでも寺僧の情けで新しい卒塔婆が一本立っていた。

十年振りでめぐり合った父が直ぐにここの土になろうとは、まるで一の夢としか思われなかった。しかもその夢はおそろしい夢であった。卵塔場には春の草が青かった。細かい雨が音もなしに卒塔婆をぬらしていた。父に逢った夕暮れにもこんな雨にぬれたことを思い出して、顔のしずくを払う六三郎の指先には涙のしずくも流れた。

死んだ父母に暇乞いは済んだ。今度は生きた人に暇乞いをしなければならない。日が暮れて六三郎はさらに新屋敷へ行った。

「よう来て下さんした」

お園は六三郎を揚屋へ連れて行った。今夜は当分の別れである。格子の立ち話では済まされなかった。二人が薄暗い燭台の前に坐った時に、雨の音はまだやまなかった。お園はどう工面したか二両の金を餞別にくれた。それから自分が縫ったといって肌着をくれた。

もう決心はしたものの、六三郎はやっぱりお園に別れるのが辛かった。呪われた土地がやっぱり懐かしかった。お園と行く末の話をしている間も、何に付けても涙ぐまれた。

「このあいだも言った通り、お前も男、必ず弱々しい気をもって下さるな。