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けっせんかわなかじま うえすぎけんしんのまき
決戦川中島 上杉謙信の巻
線上閱讀坂口 安吾《決戦川中島 上杉謙信の巻(けっせんかわなかじま うえすぎけんしんのまき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,278 字 · 19 頁
彼は女中をよび、部屋の片隅に身を隠すようにしてヒソヒソと勘定を訊いていたが、にわかに再び狂笑して、女中を突きとばし、部屋の中を踊りはじめた。
「あれだけ食って、三百五十円! 大皿山盛り四ハイたッた三百五十円! アッハッハッハッハア!」
その狂態は、バイを食して五体に熱気陽発したものの如くであった。余はそれを見すてて旅館をでた。程なく放善坊の追いせまる音をきいたが、余はそれに無関心であった。余はこのたびの出陣に当り、余が修学の禅林の池底に秘かに埋蔵して出発すべき秘密の誓文の文案をねっていたのである。それは次の如くできた。
この一戦はバイより出づ
余はバイなり
悪逆無道の山蛸をただ八ツ裂きにせんのみ
川中島に立ち大本営を望見す
ひそかに戦備をととのえ、八月十四日に至って、春日山城を発す。
余の率いし兵一万三千なお二万の留守兵を春日山に残して敵の奇襲に備えしめた。
およそ戦は兵力の大に頼るべからざるものだ。各人それぞれバイたらんとすれば足る。いたずらに数の大なるものは機動力を失うのである。
しかし余が春日山に二万の留守兵を残したのは、単にそれだけの意味ではなかった。