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うずまけるからすのむれ

渦巻ける烏の群

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《渦巻ける烏の群(うずまけるからすのむれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,240 字 · 35 頁

青空文庫

陰欝に唖々と鳴き交すその声は、丘の兵舎にまで、やかましく聞えてきた。それは、地平線の隅々からすべての烏が集って来たかと思われる程、無数に群がり、夕立雲のように空を蔽わぬばかりだった。

烏はやがて、空から地平をめがけて、騒々しくとびおりて行った。そして、雪の中を執念くかきさがしていた。

その群は、昨日も集っていた。

そして、今日もいる。

三日たった。しかし、烏は、数と、騒々しさと、陰欝さとを増して来るばかりだった。

或る日、村の警衛に出ていた兵士は、露西亜の百姓が、銃のさきに背嚢を引っかけて、肩にかついで帰って来るのに出会した。銃も背嚢も日本のものだ。

「おい、待て! それゃ、どっから、かっぱらって来たんだ?」

「あっちだよ。」髯もじゃの百姓は、大きな手をあげて、烏が群がっている曠野を指さした。

「あっちに落ちとったんだ。」

「うそ云え!」

「あっちだ。あっちの雪の中に沢山落ちとるんだ。……兵タイも沢山死んどるだ。」

「うそ云え!」兵士は、百姓の頬をぴしゃりとやった。「一寸来い。中隊まで来い!」

日本の兵士が雪に埋れていることが明かになった。背嚢の中についていた記号は、それが、松木と武石の中隊のものであることを物語った。