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うずまけるからすのむれ

渦巻ける烏の群

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《渦巻ける烏の群(うずまけるからすのむれ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,240 字 · 35 頁

青空文庫

それは、××××なのだ。

敵のために、彼等は、只働きをしてやっているばかりだ。

吉永は、胸が腐りそうな気がした。息づまりそうだった。極刑に処せられることなしに兵営から逃出し得るならば、彼は、一分間と雖も我慢していたくはなかった。――僅かの間でもいい、兵営の外に出たい、情味のある家庭をのぞきたい。そういう慾求を持って、彼は、雪の坂道を攀じ登った。

丘の上には、リーザの家があった。彼はそこの玄関に立った。

扉には、隙間風が吹きこまないように、目貼りがしてあった。彼は、ポケットから手を出して、その扉をコツコツ叩いた。

「今晩は。」

屋内ではペーチカを焚き、暖気が充ちている。その気はいが、扉の外から既に感じられた。

「今晩は。」

「どうぞ、いらっしゃい。」

朗らかで張りのある女の声が扉を通してひびいて来た。

「まあ、ヨシナガサン! いらっしゃい。」

娘は嬉しそうに、にこにこしながら、手を出した。

彼は、始め、握手することを知らなかった。それまで、握手をしたことがなかったのだ。何か悪いことをするように、胸がおどおどした。

が、まもなく、平気になってしまった。

のみならず、相手がこちらの手を強く握りかえした時には、それは、何を意味しているか、握手と同時に、眼をどう使うと、それはこう云っているのだ。