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げんのすけのいっしょう
源之助の一生
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《源之助の一生(げんのすけのいっしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,444 字 · 7 頁
田圃の太夫といわれた沢村源之助も四月二十日を以て世を去った。舞台に於ける経歴は諸新聞雑誌に報道されているから、ここにはいわない。どの人も筆を揃えて、江戸歌舞伎式の俳優の最後の一人であると伝えているが晩年の源之助は寄る年波と共に不遇の位地に置かれて、その本領をあまりに発揮していなかった。
源之助が活動したのは明治時代の舞台で、大正以後の彼は殆ど惰力で生存していたかの感があった。したがって、今日彼を讚美している人々の大部分は、その活動時代をよく知らないように思われる。勿論、彼を悪くいう者はない。どの人も惜しい役者を失ったということに意見は一致しているらしいが、同じく惜まれるにしても、その真伎倆を知らずして惜まれるのは、当人の幸であるかどうか疑わしい。しかも前にいう通り、大正以後二十五年間は殆どその伎倆を完全に発揮する機会を封じられていたのであるから是非もない。
彼は七十八歳の長寿を保ったので、子役時代からでは七十余年間の舞台を踏んでいたといわれる。その間で彼が活動したのは明治時代、殊にその光彩を放ったのは、明治十五年十一月、四代目沢村源之助を襲名して名題俳優の一人に昇進して以来、明治二十四年の七月、一旦東京を去って大阪へ下るまでの十年間であった。