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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《潜航艇「鷹の城」(せんこうてい「ハビヒツブルグ」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,395 字 · 263 頁

青空文庫

揺れる、くねる。

私は、咽喉がからからになって自分の喘ぎが、ガンガン鳴る耳のなかへ響いてきます。

「では御ゆるり」

私は、やっと咽喉をうるおし、これだけを云いました。すると、ヘミングウェー嬢は、

「マア、あんた、あんたは割と世帯染みてんのね」

そう云って、くすんとお笑いになったようです。が、その頃から、鏡玉が室の温度に馴れ、やっと靄が霽れはじめてきました。と、灌水のひらいた、夕立のような音がする。

それも、湯のほうが捻られて、もうもうと立ち罩めてくる。せっかくの、喘ぐような瞬間がまた旧へ戻ってしまったのです。

「お気の毒さまね」

ミス・ヘミングウェーが、嘲るように云いました。

「なにがです」

「知っているくせに。……もっと黒檀紳士は、明けっ放しの人かと思っていたわ。つまり、四十碼スクラムからスリークォーター・パスになって、それを、私がカットして好蹴をタッチに蹴出す。一挙これじゃ、三十碼挽回ね」

「分りませんね。何です、それは」

「分らないの、マアいいわ。いいから、出てないと水を引っかけるわよ」

私はさんざんに翻弄され、それでも、若葉を嗅ぐような、爽けい匂いをつけて戻ってきました。