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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《潜航艇「鷹の城」(せんこうてい「ハビヒツブルグ」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,395 字 · 263 頁

青空文庫

そのなかで、絶えず囚人たちは、慌しい気圧の変化や、小さな波を呑み尽してしまうような大波の出現、雷のような海底地震の轟き――などに気を打たれていたが、やがて、海の階調のすべてを知り尽くしてしまうと、静かに赦免の日を待つようになった――しかしそれは、彼らの次代に巨人を得た際のことである。

ところが、まもなくこの一孤島に、不思議な囚人が訪れることになった。

と云うのは探鯨の雅号が、無束というのでも分るように、彼にはまた、通人的な半面があって、ことに俳優を愛したのであった。けれども、結局にはそれが禍いとなって、あろうことか正室薄雪の方が、上方役者里虹と道ならぬ褄を重ねたのである。薄雪の方は、嵯峨二位卿の息女であり、一方は門閥もなく、七両の下廻りから叩き上げた千両役者なのであるが、ついにその二人は、島の外にある小島に隔てられて、凋んだ花の香りを、絶海の孤島から偲ぶ身になったのである。

しかし、この孤島の所在は、探鯨の死と同時に国替えなどもあって、ついに姉川家の記録から、消え失せてしまったのであった。

ところが、それから何十年経った後のことだったろうか、はからずも流島のさい実家に送った文書が嵯峨家から発見されて、ようやく惨鼻を極めた流島史が陽の目を見ることになった。