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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《潜航艇「鷹の城」(せんこうてい「ハビヒツブルグ」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,395 字 · 263 頁

青空文庫

そして、間に役者が入って孔から顔だけを、突き出すんですよ。なあに他愛のねえもんで、外側は括り付けの衣裳なんでさあ。ですが、今日はなんとも不思議なことで、誰か取り違えて押し込んだのかも知れませんが、豊竹屋が後向きに入ってしまったんです。なんですって、それが豊竹屋じゃねえって――とうに殺されていたっておっしゃるんですか。じょ、冗談じゃねえ、わっしらはちゃんと、台詞までも、聴いているんですからね」

「なに、逢痴の台詞を聴いたって――」

法水は、その一度ですっかり顔色を失ってしまった。

「そうですとも、聴いたのはわっしばかりじゃねえ、みんながそうでさあ。なあ、銀五郎――」

と傍らにいる、顔中傷だらけの小道具方を見て、村次郎は同意を求めるように云った。

「なにしろ、最初本づりのきっかけで、入って来たのも、豊竹屋なんですよ。それからわっしらが、総掛りで浪衣を着て、杉戸を差し上げているうちに、何を見たのか為十郎が、アッ久米八さんが――と叫んだものです。ですからわっしは聴えてはならぬと、為十郎の口を塞ぎましたが、それからすぐとお岩の台詞になり、小仏小平がすんで、ようやく杉戸を下しましたが、それからが、息を次ぐ暇もないほどの早業なんです。