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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《潜航艇「鷹の城」(せんこうてい「ハビヒツブルグ」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,395 字 · 263 頁
朝枝の云うのが、もし真実だとすれば、アマリリスをウルリーケが持ち込むと同時に、殺人が起ったと云えるだろう。そして、それまで十何日か鎖ざしていた蕾が、その時パッと開いてしまったのだ……」
海霧が扉の隙からもくもく入り込んで来て、二人の周囲を烟のように靡きはじめた。が、それを聴くと、法水は突然坐り直したが、すると頭上の霧が、漏斗のように渦巻いて行くのだ。彼は手にした「ニーベルンゲン譚詩」を、縦横に弄びながら、
「冗談じゃないね。この事件に、心理分析も検証もくそもあるもんか。あのトリエステに始まった、大伝奇の琴線に触れることだよ。で、先刻この本を見たとき、ふと思いあたったことだが、君はシャバネーが運命の先行者と云った、憑着心理を知っているかね。かりに、自分の境遇が、小説か戯曲中の人物に似ているとする場合だ。そのちょっとした発見から、たちまち偏見が湧き起って、その人間は遮二無二最後の頁を開け、大団円を見てしまうんだ。現に、その展覧狂めいたものが、あの流血には現われているじゃないか。だが支倉君、もし、その心理を前提とするとだ……」
検事はニコリと微笑んで、法水に全部を云わせなかった。