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らどうせんせい
潤一郎ラビリンスII――マゾヒズム小説集
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《潤一郎ラビリンスII――マゾヒズム小説集(らどうせんせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,093 字 · 33 頁
記者が応接間を辞したのはそれから数分後であったが、何だか餘り業腹でもあり、まだ此れだけでは記事の材料が足りないような気がしたので、表門を出ると小さな塀の外側を廻りながら、もう一度よく此の邸の建て方や、構えの内外を観察した。家は灰色の壁を塗った、わりに新しい洋館で、成る程四人で住むのにはちょうど手頃な、平家建ての造りである。記者はだん/\その塀に沿うて雑木林の丘を控えた後ろの方へ廻って行くと、裏は疎らな扇骨木の生け垣になっていて、垣根の中がすっかり覗かれる。多分彼処の、煙突から煙の出ている部屋が先生の書斎なのだろう。そう云えば北側で、日あたりの悪い、陰気な室を択んだところは先生らしい、―――と、記者がそんなことを考えているとたんに、ガチャン、ガチャンと、吸上ポンプで井戸の水を汲む音がした。ハテ、と思ってそっちを見ると、井戸端にしゃがみながら、十五六の小女が寝間着のまゝで歯を研いている。小女は楊枝を使ってしまうと、金盥へ水を取って、タオルでぞんざいに顔を洗ったが、それなり台所の方へは行かずに、すた/\と此方へ歩いて来て、裏庭へ降りるドーアを開けて、紅い鼻緒のぴたんこな下駄を石の階段の上へ脱ぎ捨て、ついと書斎の中へ這入った。