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ぼくとうきだん

濹東綺譚

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《濹東綺譚(ぼくとうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,666 字 · 114 頁

青空文庫

すみ子は窓を明けて、「ここが涼しいわ。」と腰巻や足袋の下っている窓の下に座布団を敷いた。

「一人でこうしていれば全く気楽だな。結婚なんか全く馬鹿らしくなるわけだな。」

「家ではしょっちゅう帰って来いッて云うのよ。だけれど、もう駄目ねえ。」

「僕ももう少し早く覚醒すればよかったのだ。今じゃもう晩い。」と種田は腰巻の干してある窓越しに空の方を眺めたが、思出したように、「明間があるか、きいてくれないか。」

すみ子は茶を入れるつもりと見えて、湯わかしを持ち、廊下へ出て何やら女同士で話をしていたが、すぐ戻って来て、

「向の突当りが明いているそうです。だけれど今夜は事務所のおばさんが居ないんですとさ。」

「じゃ、借りるわけには行かないな。今夜は。」

「一晩や二晩、ここでもいいじゃないの。あんたさえ構わなければ。」

「おれはいいが。あんたはどうする。」と種田は眼を円くした。

「わたし。此処に寝るわ。お隣りの君ちゃんのとこへ行ってもいいのよ。彼氏が来ていなければ。」

「あんたの処は誰も来ないのか。」

「ええ。今のところ。だから構わないのよ。だけれど、先生を誘惑してもわるいでしょう。