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ぼくとうきだん

濹東綺譚

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《濹東綺譚(ぼくとうきだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,666 字 · 114 頁

青空文庫

」

「四十にしても若いね。髪の毛なんぞそうは思えないわ。」

「明治三十一年生だね。四十だと。」

「わたしはいくつ位に見えて。」

「二十一二に見えるが、四ぐらいかな。」

「あなた。口がうまいから駄目。二十六だわ。」

「雪ちゃん、お前、宇都の宮で芸者をしていたって言ったね。」

「ええ。」

「どうして、ここへ来たんだ。よくこの土地の事を知っていたね。」

「暫く東京にいたもの。」

「お金のいることがあったのか。」

「そうでもなけれア……。檀那は病気で死んだし、それに少し……。」

「馴れない中は驚いたろう。芸者とはやり方がちがうから。」

「そうでもないわ。初めッから承知で来たんだもの。芸者は掛りまけがして、借金の抜ける時がないもの。それに……身を落すなら稼ぎいい方が結句徳だもの。」

「そこまで考えたのは、全くえらい。一人でそう考えたのか。」

「芸者の時分、お茶屋の姐さんで知ってる人が、この土地で商売していたから、話をきいたのよ。」

「それにしても、えらいよ。年があけたら少し自前で稼いで、残せるだけ残すんだね。」

「わたしの年は水商売には向くんだとさ。だけれど行先の事はわからないわ。ネエ。」