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はいいろのきおく

灰色の記憶

久坂 葉子

線上閱讀久坂 葉子《灰色の記憶(はいいろのきおく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 65,588 字 · 132 頁

青空文庫

子供部屋におさまることがきらいな私は、立入禁ずの客間へみんなを連れこんで、クッションを投げとばしたりソファの上をとびこえたりした。それから好きなあそび場は、押し入れの中であった。ナフタリンのにおいと、ほこりっぽいわたのにおいが、私を喜ばせた。戸をぴったりしめこんで、真くらな中で、女の子を裸にさせたこともある。やはり、マネキンを抱いて眠りたい夢のつづきであったわけなのだ。英雄の命令通りに、大人しい女の子は短いスカートをとりはずした。私は、その白い乳くさい臭いのする肌をさわって、感傷的にさえなった。

私の母は、私が学校から帰っても家にいることは殆どなかった。母の会だとか、友の会だとか、そんな会にはいっていて、絶えず外の用事ばかりをしていた。弟が肺炎で、生死の間を彷徨している時でさえ、家に居なかったということを、大きくなって乳母から度々きかされたことがある。楽天的な性質らしく、それに、お針をしたり、台所で食事の用事をすることを好まないのか、ついぞそういう母の姿をみたことがなかった。

「お家へかえったら、お母様、唯今かえりました、と云うのです」

先生がそう云った時、私は大へん物悲しい表情をして、