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かたすみのこうふく

片隅の幸福

種田 山頭火

線上閱讀種田 山頭火《片隅の幸福(かたすみのこうふく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 838 字 · 2 頁

青空文庫

大の字に寝て涼しさよ淋しさよ

一茶の句である。いつごろの作であるかは、手もとに参考書が一冊もないから解らないけれど、多分放浪時代の句であろうと思う。とにかくそのつもりで筆をすすめてゆく。――

一茶は不幸な人間であった。幼にして慈母を失い、継母に虐められ、東漂西泊するより外はなかった。彼は幸か不幸か俳人であった。恐らくは俳句を作るより外には能力のない彼であったろう。彼は句を作った。悲しみも歓びも憤りも、すべてを俳句として表現した。彼の句が人間臭ふんぷんたる所以である。煩悩無尽、煩悩そのものが彼の句となったのである。

しかし、この句には彼独特の反感と皮肉がなくて、のんびりとしてそしてしんみりとしたものがある。

大の字に寝て涼しさよ――はさすがに一茶的である。いつもの一茶が出ているが、つづけて、淋しさよ――とうたったところに、ひねくれていない正直な、すなおな一茶の涙が滲んでいるではないか。

彼が我儘気儘に寝転んだのはどこであったろう。居候していた家の別間か、道中の安宿か、それとも途上の樹蔭か、彼はそこでしみじみ人間の幸不幸運不運を考えたのであろう。切っても切れない、断とうとしても断てない執着の絆を思い、孤独地獄の苦悩を痛感したのであろう。