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かわ

牛をつないだ椿の木

新美 南吉

線上閱讀新美 南吉《牛をつないだ椿の木(かわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 75,647 字 · 155 頁

青空文庫

だが、和太郎さんは、なァに、きょうはだいじょうぶだ、と思いました。「おれにだってわきまえというものがあるさ」とひとりごとをいいました。そして一本松と茶屋の前を通りかかりました。

酒飲みの考えは、酒の近くへくると、よくかわるものであります。和太郎さんも、茶屋の前までくると、じぶんの石のようにかたかった決心が、とうふのようにもろくくずれていくのをおぼえました。

じつは和太郎さんも、牛に酒のおりをなめさせているとき、じぶんも、のどから手の出るほど飲みたかったのを、おさえていたのでした。その欲望が、茶屋の前できゅうに頭をもちあげてきました。

「ま、ちょっと一服するくらい、いいだろう」

と和太郎さんは、手綱を松の太いみきにまきつけながら、いいました。牛はいつものようにおとなしくしていました。

そして和太郎さんは、茶店に、手をこすりながら、はいっていきました。

いつものとおりでした。もうちょっと、もうちょっとといっているうちに、時間はすぎていきました。徳利の数もふえていきました。

茶屋のおよしばあさんが、いろいろ和太郎さんの世話をやいて、松から手綱をといてくれたり、小田原ちょうちんに火をともしてくれたのも、いつものとおりでした。