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かわ

牛をつないだ椿の木

新美 南吉

線上閱讀新美 南吉《牛をつないだ椿の木(かわ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 75,647 字 · 155 頁

青空文庫

うしろの照次郎君も、与之助君も、それぞれの制作に余念がない。

すこし時間がたった。春吉君はたすかったと思った。と、そのせつな、古手屋の遠助が、あ、くせ、と、第一声をはなった。すぐに、くせえ、くせえ、という声が、四方に伝わった。春吉君は、はずかしさで顔がほてってきた。

いつもと同じさわぎがはじまった。屁えこき虫の石太郎が屁をはなったときと、寸分ちがわぬことが。

春吉君は、どうしていいのかわからない。もう、なりゆきにまかすばかりだ。

やがて古手屋の遠助が、きょうは大根菜屁だといった。なんという鋭敏な嗅覚だろう。たしかに春吉君は、けさ大根菜のはいったみそしるでたべてきたのである。

やがてさわぎが大きくなりだしたころ、藤井先生が例によって、

「だれだっ」

とどなられた。春吉君は意味もなくねんどをひねりながら、いきをのんて、面をふせた。みんなの視線が、ちょうどいつも石太郎の上に蝟集するように、きょうは、じぶんにそそがれているのだと思いながら。

いまにどこからか、春吉君だという声が起こってくるにそういない、と思った。そういうふうにすっかり観念していたので、石だ、石だ、というあやまった声があがったときには、じぶんの頭上に落ちてくるはずのげんこつが、わきにそれたように、ほっとしたきみょうな感じになった。