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いちろうじん

犬田卯短編集二

犬田 卯

線上閱讀犬田 卯《犬田卯短編集二(いちろうじん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,383 字 · 103 頁

青空文庫

それに、あれです、いくらあの川ンとこを測量してみて『買い上げ』てくれと請願しても、村長さんはちっとも、てんではア取りあげてくんなかったし……」

「冗談いってら、あれは君、ちゃアんと俺は村長の職務引き渡しすっとき、後任へ話しておいたぜ。あれをまだ実行せんのかい、怪しからん奴じゃ。事務怠慢にもほどがある。」

「俺はもう請願するたびに面白くねえ思いするばかりだから、あっさり諦めてますがね。」

「うむ、まアそれもそうだな。人間、なんでも諦めが肝心だって、古人も教えているからな。」

「でも、村長さん、あの時の五十円が、いつか二百円になってますぜ。」

「放っておけば当然……だが君、そう言っちゃなんだが、あの頃出来た君の娘も、いつか十七八になってやしねえのか。」

儀作ははっと胸をつかれた。そういう前村長が何を意味するか、あまりに判然と、電撃のごとく閃いてきたからである。――村から東京方面へ娘を出かせぎに――泥水商売の女に出している家に限って租税の滞納がない。ことに三人の娘を出している家など、村の事業に相当の寄付さえ惜しまなかったというので、その家を表彰しようじゃないかと言う案を村会へ持ち出したのが、すなわちこの前村長だったのだ。