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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
さてはかの妖怪は自分ひとりの眼にみえたのか、それとも他の人々も自分とおなじように黙っているのかと思案しているうちに、百番の物語はとどこおりなく終った。百すじの燈心はみな消されて、その座敷も真の闇となった。
中原は試みに一座のものに訊いた。
「これで百物語も済んだのであるが、おのおののうちに誰も不思議をみた者はござらぬか。」
人々は息をのんで黙っていると、その中でかの筧甚五右衛門がひと膝すすみ出て答えた。
「実は人々をおどろかすも如何と存じて、先刻から差控えておりましたが、拙者は八十四番目のときに怪しいものを見ました。」
ひとりがこう言って口を切ると、実は自分も見たという者が続々あらわれた。だんだん詮議すると、第七十五番の本郷弥次郎という男から始まって、その後の人は皆それを見たのであるが、迂濶に口外して臆病者と笑われるのは残念であると、誰も彼も素知らぬ顔をしていたのであった。
「では、これからその正体を見届けようではないか。」
中原が行燈をともして先に立つと、他の人々も一度につづいて行った。今までは薄暗いのでよく判らなかったが、行燈の灯に照らしてみると、それは年のころ十八九の美しい女で、白無垢のうえに白縮緬のしごきを締め、長い髪をふりみだして首をくくっているのであった。