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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁

青空文庫

」

石川ひとりの出来事ならば、心の迷いとか眼のせいとかいうことになるのであるが、神南といい、堀口といい、森積といい、ほかにも三人の証人があるのであるから、織衛も一方に否認説を唱えながらも、さすがにそれを力強く主張するほどの自信もなかった。さっきから待ちかねていた伜の余一郎は思い切って起ち上がった。

「お父さん、やっぱり私が行って見て来ましょう。」

「では、おれが案内する。」と、神南と堀口も起った。

まだほかにも五、六人起ちかかったが、夜中に大勢がどやどやと押出すのは、世間騒がせであるという主人の意見から、余一郎と神南と堀口の三人だけが出てゆくことになった。

むかしの俳句に「綱が立って綱が噂の雨夜哉」というのがある。渡辺綱が羅生門と行きむかったあとで、綱は今頃どうしているだろうという噂の出るのは当然である。この席でもやはり、三人の噂をしているうちに、雪の夜はおいおいに更けた。余一郎らは張合い抜けのしたような顔をして引揚げて来て、屋敷から横町までの間には何物もみえなかった、横町は念のために二度も往復したが、そこにも犬ころ一匹の影さえ見いだされなかったと報告した。