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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二(うみがめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 頁
「そうだろうな。」と、織衛はうなずいた。
そんなことに邪魔をされて、今夜の歌留多会はとうとうお流れになってしまった。夕方から用意してあった五目鮨がそこに持ち出され、人々は鮨を食って茶を飲んで、四つ頃(午後十時)まで雑談に耽っていたが、そのあいだにも石川はいつもほどの元気がなかった。それは武士たるものがかの妖婆に悩まされたということが、なにぶん面目ないのであろうと一座の者にも察せられた。
果して彼はひと足さきへ帰ると言い出した。
「御主人、今晩はいろいろ御厄介になりました。」
挨拶して起とうとする彼を、堀口はひき止めた。
「まあ、待てよ。どうせ同じ道じゃないか。一緒に帰るからもう少し話して行けよ。」
「いや、帰る。なんだか、風邪でも引いたようでぞくぞくするから。」
「ひとりで帰ると、又鬼婆にいじめられるぞ。」と、堀口は笑った。
石川は無言で袂を払って起った。
三
一座の話は四つ半頃(午後十一時)まで続いた。歌留多会は近日さらに催すということにして、二十人余りの若侍は主人に暇を告げて、どやどやと表へ出ると、更けるに連れて、雪はいよいよ激しくなった。思いのほかに風はなくて、細かい雪が静かに降りしきっているのであった。